歩行時のふらつき・めまい
歩行時のふらつき・めまいの原因と当院の診療
「最近、まっすぐ歩けない」「立ち上がった時にふらつく」「めまいがする」といった症状は、日常生活の質(QOL)を大きく低下させ、転倒による怪我のリスクを高めます。これらの症状は単なる「年のせい」と片付けられがちですが、脳神経系、全身的な問題、耳鼻科的な問題、心因性など、様々な原因が考えられます。
当院では、日本神経学会神経内科専門医・指導医である院長が、多角的な視点から原因を正確に診断し、患者様一人ひとりに合わせた最適な治療と生活指導を提供いたします。
### 脳神経系が原因のふらつき・歩行障害歩行時のふらつきや不安定さは、脳や神経の病気が原因となっていることがあります。特に、体のバランスを司る小脳や、歩行をコントロールする大脳基底核の異常が関与します。
| 疾患名 | 主な特徴と症状 | 当院の対応の方向性 |
|---|---|---|
| パーキンソン病 | 動作の遅さ(寡動)、小刻み歩行、安静時のふるえ、姿勢反射障害(バランスの悪さ)が特徴。左右差が出やすい。 | 専門医による正確な診断。ドパミン補充療法を中心とした薬物調整と多剤併用対策。 |
| 脳血管障害 | 脳梗塞や脳出血の後遺症、または微小な脳梗塞(多発性ラクナ梗塞など)による歩行障害。足がすくむ、下半身の動きが悪いなど。 | 生活習慣病(高血圧、糖尿病など)の厳格な管理と再発予防。 |
| 進行性核上性麻痺 (PSP) | 初期からの強いふらつきと頻繁な転倒、特に上下方向の眼球運動の障害を伴うことが多い。 | 症状に合わせた薬物療法。リハビリテーションの指導と連携。 |
| 多系統萎縮症 (MSA) | 小脳失調による強いふらつき、呂律の回りにくさ、排尿障害や起立性低血圧などの自律神経症状を伴うことが多い。 | 対症療法と、自律神経症状を含めた包括的な管理。 |
| 正常圧水頭症 (NPH) | 歩行障害、認知機能の低下、尿失禁の三徴候。足が床に張り付くような特徴的な歩き方。治療により改善が見込める場合がある。 | 専門病院での精密検査やシャント手術の適応判断と紹介。 |
| 末梢神経障害 | 足のしびれや感覚の鈍さが原因で、足元が不安定になる。糖尿病などが原因となることが多い。 | 原因疾患(糖尿病など)の管理と、症状を緩和する薬物療法。 |
### 全身的な問題・内科系が原因のふらつき・めまい
ふらつきは、脳や耳以外の全身の状態(内科的な問題)によっても引き起こされます。
| 原因 | メカニズムと症状 | 当院の対応の方向性 |
|---|---|---|
| 起立性低血圧 | 立ち上がった際に血圧が下がりすぎ、脳への血流が一時的に不足することで、立ちくらみや眼前暗黒感、ふらつきが生じる。 | 服用中の薬剤の見直し(薬剤性の場合)。生活指導(水分・塩分摂取、急な動作の回避)と昇圧剤の検討。 |
| 薬剤の副作用(薬剤性) | 降圧剤、抗うつ薬、精神安定剤、睡眠薬、てんかん薬など、様々な薬の副作用としてふらつきが生じることがある。特に高齢者で多剤併用(ポリファーマシー)の場合に注意。 | 総合内科専門医の視点から、服用中の薬剤を整理・調整し、副作用のない治療薬への見直しを検討。 |
| 不整脈 | 徐脈(脈が遅い)や頻脈(脈が速い)により、心臓から脳へ送られる血液量が不安定になり、めまいやふらつき、失神を引き起こすことがある。 | 循環器専門医への紹介。必要に応じてホルター心電図などの検査を検討。 |
| 貧血 | 血液中の酸素運搬能力が低下し、全身の酸素不足からふらつきや倦怠感がが生じる。 | 血液検査による貧血の特定と、原因に応じた鉄剤投与や食事指導。 |
| 脱水・低栄養 | 体液や電解質の異常により、全身倦怠感とともにふらつきが生じる。 | 適切な水分・栄養補給の指導。点滴治療の検討。 |
### 耳鼻科系が原因のめまい(平衡感覚の異常)
平衡感覚を司る内耳(三半規管など)の異常によって、めまいやふらつきが生じます。
| 疾患名 | 主な症状 | 当院の対応の方向性 |
|---|---|---|
| 良性発作性頭位めまい症 (BPPV) | 頭を特定の方向に動かした時に、グルグル回るような激しいめまいが短時間起こる。 | 専門医として鑑別診断。症状は強いため、患者さんは心配になりますが、ほとんどは運動療法によって改善します。 |
| メニエール病・突発性難聴 | 激しいめまいとともに、難聴、耳鳴り、耳の詰まった感じを繰り返す。 | 難聴を伴うめまいはメニエール病や突発性難病の場合もあり、耳鼻咽喉科専門医への紹介します。 |
| 前庭神経炎 | 急に発症し、数日〜数週間持続する激しいめまい。 | 専門医として鑑別。回転性めまい以外の症状がある場合は画像検査で他疾患の鑑別が必要、症状が強く生活が困難な場合は入院が必要なこともありますので、入院施設のある病院への紹介を検討します。 |
### 心因性(ストレスなど)が原因のめまい・ふらつき
脳神経系や内科系、耳鼻科系といった身体的な異常が見当たらないにも関わらず、めまいやふらつきが続く場合、心因性(心理的な要因やストレス)が関わっている可能性があります。これは、不安や緊張、過度なストレスなどによって自律神経のバランスが乱れることで生じます。
| 原因 | メカニズムと症状 | 当院の対応の方向性 |
|---|---|---|
| 心因性めまい | 浮動感やフワフワするめまい、立ちくらみのような症状が特徴的です。「今にも倒れそう」といった強い不安感を伴うこともあります。検査をしても身体的な異常が見つからないことが多く、特に過呼吸やパニック発作を伴うケースもあります。 | 総合内科専門医の視点から身体的な疾患がないことを丁寧に鑑別。心理的な側面も考慮し、生活指導や自律神経のバランスを整えるための薬物療法(抗不安薬など)を検討。必要に応じて専門の心療内科・精神科への連携を行います。 |
### 当院での総合的な診療
ふらつきやめまいの原因を特定するためには、脳神経内科、総合内科、耳鼻科的な視点からの包括的なアプローチが必要です。
- 詳細な問診と診察:症状の発症形式や経過、ふらつきの起こる状況(立ち上がる時、歩き始め、特定の動作など)や、服用中の薬、合併症などを詳細に伺います。
- 神経学的診察:姿勢、歩行、バランス、目の動き、手足のふるえなどを、脳神経内科専門医が評価します。
- 内科的評価:血圧(特に起立時の変化)、不整脈の有無、貧血の有無などを総合内科専門医の視点から確認し、全身的な問題を検索します。
- 診断・治療の最適化:診断に基づき、パーキンソン病の薬の調整、生活習慣病の管理、原因薬剤の整理(ポリファーマシー対策)など、患者様にとって最も必要な治療を賢明に選択(Choosing Wisely)します。
「ふらつきがあるけど、何科を受診したらいいかわからない」と悩まず、まずは脳神経内科と総合内科の両方に精通した当院にご相談ください。皆様の安全な日常生活をサポートいたします。
